海外赴任者 帰任に備えた日本の家探し 16 【ローン正式審査~決済編 5/6】

「海外赴任者 帰任に備えた日本の家探し」シリーズ。今回は、「4.住所移転と住民票、印鑑証明書取得」と「5.金銭消費貸借契約(=住宅ローンの契約のこと)」について、ご説明したいと思います。今回ご説明する手続きは、一回の帰国で済ませるようにしましょう。もう一度、全体の流れを整理すると、「内見~(売買契約後)住宅ローン正式審査」までで帰国1回、今回ご説明する「住所移転~決済」で帰国1回、とすると、帰国数を最小限にできます。

耳慣れない言葉かもしれませんが、「金銭消費貸借契約(略称:金消契約 キンショウケイヤク)」というのは、ローンの契約のことで、住宅購入の際には、住宅ローンや諸費用ローンなどで、この契約が登場します。簡単に言えば、お金を借りる人と、貸す人との間で、「この条件でお金を貸借しましょうね。」という契約です。契約を結ぶタイミングは、売買代金の残金決済の1週間ほど前で、この契約に基づいて、決済の日に融資がおりるわけですね。この金消契約の時に、住所移転後(=買った家)の印鑑証明書と住民票が必要になります(実際には「必要」ということではないですが、詳細は後述します。)。

「あれ、何かおかしい?」と思われた方、正解です。買った家への引っ越しは、所有権が買主に移ってからです。決済の日に、不動産の所有権が買主に移ります。決済の一週間ほど前に金消契約を行ないます。その金消契約に住所移転後の住民票等が必要なので、それよりも前に、住所移転をします...何がおかしいかというと、所有権が移るよりも前に、住所が移ってしまっているところです。“本来の流れ”は、金消契約のときに住民票と印鑑証明書が必要なのであれば、今住んでいる家のものを持っていくはずです。しかし、不動産売買やそれにかかわる住宅ローンの慣習では、所有権が移る前に、買った家に住所を移転させてしまう「新住所登記」という方法がとられます(こちらの方が一般的)。一方“本来の流れ”の方は「旧住所登記」と言われています。

なぜ、わざわざ新住所登記のような、方法を使うのでしょうか?

答えは、お金が節約できるからです。まず、旧住所登記をすると、どのようなことになるかをご説明します。決済の日に、買主が売主に対して売買代金全額を支払うと所有権が買主に移ります。その際に、「所有者は私(買主)です」という登記をします。登記をすると、その不動産の登記簿謄本には、「所有者『住所』『氏名』」と登記されます。決済が終わって直ぐに買った家に引っ越すとしても、登記簿謄本上の所有者の住所は前の住所、ということになります。だから旧住所登記と呼ばれています。登記は義務ではありませんので、登記簿上旧住所のままでも何ら問題はありませんが、将来売却する時に、「住所変更登記」の費用として2万円程度かかります。売る時には、買った家に既に引っ越している状態です。このような場合、次の買い手に所有権を移す際には、「売主の住所は『新住所』」という登記をして(=住所変更登記)、その後に「所有者は売主(住所は新住所)から買主に変わりました。」という登記(=所有権移転登記)、といった手順を踏みます。いきなり旧住所の売主から買主に所有権移転登記というわけにはいかないわけですね。これを、新住所登記で行なうと、買った時の所有権移転登記の時点で、「所有者『住所(新住所)』『氏名』」となり、将来売却する時には、実際に住んでいる場所と、登記簿上の住所が一致していることになるので、わざわざ住所変更登記をする必要がなくなります。

このようなことから、新住所登記で行なうことの方が、商慣習上、一般的になっています。旧住所登記でも、手続き自体は何も問題なく行なえますので、「なんとなく先に住所を移すのは気持ち悪い」とか、「住所移転の手続きをしている暇がない」というような方は、無理に新住所登記にこだわる必要はありません。旧住所登記の場合には、その住所の住民票と印鑑証明書を用意する必要があります。また、住宅ローン控除等を利用する際には、住宅用家屋証明という書類が必要になり(旧住所登記の場合のみ)、登記を担当する司法書士に、いま住んでいる家の賃貸借契約書を見せる必要があります。

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旧住所登記の場合、登記上は旧住所のままでほったらかしでも良いのですが、役所への住所移転手続きは、決済終了後、速やかに行わなければいけません。郵便物が受け取れなくなるから当たり前といえばそうなのですが、それ以外にも、決済後すぐの住所移転を銀行から求められるからです。住宅ローンというのは、その他の融資(事業用等)と比較すると、金利が非常に低く設定されています。銀行としては、住宅ローンとして融資したからには、その用途にお金を使ってもらわなければ困るわけです(というか契約違反です)。「確かに新しい家に住みました」という証拠として、新しい住所に移った後の住民票提出を求められるのです。

海外居住の方の場合、住所移転の手続きで問題が生じる可能性もありますので、ご注意ください。海外からの転入(購入物件所在地)の場合は、役所でパスポートのビザページをチェックされ、ちゃんと帰国しているか確認されることがあります。海外赴任が終わり、帰国した後に、住所移転、金消契約、決済という順序で進むのであれば、問題ありません。しかし、お客様によっては、帰任よりも先に決済をさせたい方もいらっしゃいます。この場合、海外赴任中に住所を移すことになってしまいますから、パスポート上は、出国したままになっていることになりますので、問題です。手続き上のエラーが発生しないように、ご自身の希望条件や役所での手続き、銀行が指定している条件などを確認しつつ、慎重に手続きを進めていきましょう。

新住所登記の場合にも、注意点があります。もし、購入する物件が「購入する物件が、築20年超(マンションのような耐火構造の場合は25年超)」で、耐震基準適合証明書を取得して住宅ローン控除等を適用させようと考えている場合には、思わぬ落とし穴があります。詳細は、下記の記事に詳しく書いていますので、そちらをご覧下さい。

≪新住所登記と耐震基準適合証明書についての関連記事≫

不動産屋さんの言うことを鵜呑みにしてはいけない!?住宅ローン減税失敗事例

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リニュアル仲介では、このようなことについても適切にアドバイスさせて頂きながら、お客様のお住まい探しをお手伝いしております。住宅購入を検討の方は是非ご相談下さい。

次回は、「D.決済(=融資実行=所有権移転=物件引渡=売買残代金支払い)

」について、説明していきたいと思います。

リニュアル仲介本部パイロット店 エージェント石川でした。

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