人口が減っても持続可能な街を選ぶ

2021年10月に和歌山県和歌山市の紀の川にかかる水道橋「六十谷水管橋」の一部が崩落し和歌山市北部の約6万世帯が断水したというニュースは記憶に新しいことかと思います。
建造物は経年で劣化するので、当然ながらある程度期間が経過すると修繕工事が必要になります。
2020年9月に政府が発表した調査結果によれば、2014年度から2018年度の5年間で、修繕が必要と判定された道路橋はおよそ6万9000ヵ所で、道路トンネルはおよそ4400ヵ所にものぼります。
ところが、修繕が必要な交通インフラのうち、道路橋の64%、トンネルの44%が、2019年度末時点で未着手だったそうです。
これらのインフラは我が国の人口が増え続けた時代に作られたもので、既に人口減少局面に突入した現在の状況では、古くなったからと言ってすべてを簡単に修繕することはできません。

■工事を支える人もいなければ予算もない

インフラの修繕には工事を担う人手が必要なのですが、建設工事の就業人口も減りつつあります。

<参考>修繕が必要な道路橋の6割は未着手か、背景に建設業の人手不足
https://weekly.ascii.jp/elem/000/004/034/4034609/

この記事は道路インフラをテーマにしたものですが、ICTの活用で生産性を向上する取り組みを行わないと人手不足の解消が難しいことがよくわかります。

他方で人口減少に加えて、昨今の新型コロナの影響もあり、地方自治体の財政が厳しくなっています。
危険だとわかっていてもお金がなければ対策が取れません。
必然的に目に見えて悪くなった箇所から直すという対処療法的な対策を取らざるを得ず、予防的な対策には人もお金も足りない状況に追い込まれつつあります。
かつて人口増加時代に作られたものをすべて直すことは不可能と言っても過言ではないでしょう。

■電気・ガス・水道が距離に応じて高くなる?

電気・ガス・水道は重要な生活インフラで、道路などと同じく定期的なメンテナンスが欠かせません。
これまでこれらの料金は距離に関係なく同じ単価が設定されています。
しかし、街中にある家へのインフラと、山の中にぽつんと数軒だけ存在する集落とでは、インフラの整備コストが大きく異なります。
インフラの面で最も効率が良いのが都市部に建設されるマンションです。
現在は郊外だろうと都市部であろうと、発生する整備コストを全体で考慮して同じ単価設定となっていますが、都市部に住む住人から不公平の声が上がってもおかしくありません。
人口が減る街を選択するということは、災害時に生活インフラにダメージを受けても、復旧までものすごく時間がかかる恐れがあり、将来的に都市部より割高の料金を負担しなければならないかもしれません。
「長年住み慣れた」「田舎暮らしがしたい」「広い家が欲しい」など郊外を選択する理由は様々ですが、今一度郊外を選択するデメリットにも目を向けたいものです。

■家を買う時には自治体も選びましょう

住宅購入=街選びです。
欲しくなった家がたまたまその自治体にあったのではなく、まず自治体を選別するのが正しい手順となります。
注目すべきは人口、特に昼間の人口です。
夜間の人口に比べて昼間の人口が多い街は産業のある人が集まる街です。
反対に昼間の人口に比べて夜間の人口が多い街はベッドタウンで、より人口が減りやすい街と言えます。
本当は自治体の財政状況や生活インフラの利用料金なども調べたいところですが、複数の自治体を詳しく調べようとすると大変なので、まずは人口だけを追いかけるのが良いと思います。(昼間人口の多い街は税収も多く財政状況も悪くないことが期待できます)
「長く住んでいるから」とか「勤務先の都合」などで自動的に自治体を選択してはいけません。
街選びは住み替えの時にしかできない、人生の中で重要な選択の一つです。

■SelFinで街力を調べましょう

セルフインスペクションWEBアプリSelFinを使うと、昼間人口・夜間人口をスコアリングした「街力」を簡単に調べられます。
全国平均は「100」です。
100を下回る街が一概に良くないという訳ではなく、街力が低いエリアで検討する場合は、狭域立地(駅からの距離)をシビアに見定める必要があるという判断になります。
不動産の資産価値はほぼ立地です。
人口減・家余り時代の住宅購入は「売却のことを想定する」ことが基本です。
ご自身の都合ばかりを優先しないよう、十分に検討したいものです。

 

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