令和時代の住宅購入 検討しているエリアの自治体は将来に期待が持てる施策を行っていますか?

住宅購入を検討する際、まず初めに何をやるべきなのでしょうか?
物件情報を探す?ローン審査を行う?
これからの住宅購入で最も大切なのは「街選び」です。
今回はどんな家を選ぶかよりも重要なその街の将来性は大丈夫か?という疑問を抱くことの大切さについてご説明します。

■令和時代の住宅購入は「いつでも売れる家」

私たちはこれからの住宅購入で重要なのはいつでも売ることができる資産価値が下がりにくい住宅購入をすることだと考えています。
現在進行形の人口減少、極端な少子高齢社会を考えると、右肩上がりの経済成長は幻のようなものです。
今の生活がずっと続くという前提よりも、将来何が起きても大きな影響を及ぼさない選択をする方が建設的な選択と言えます。
また、はじめに購入した家に死ぬまで住み続けるというのも幻想で、高齢期の資産状況を考えると、持ち家の売却という選択肢は、高齢期を快適に過ごす大きな切り札となります。
これまでのように住宅の資産価値を軽視する、住居費を毀損し続ける余裕は、多くの日本人には残されていないと言えるでしょう。

■いつでも売れる家の条件は人が集まる街であること

それではいつでも売れる家とは何でしょうか。
デザイン性に優れていたり、最新の住宅設備が備わっていればいつでも売れるのでしょうか。
住宅のスペックは家の売りやすさに影響しますが、ここの環境よりも影響が多いのが、その街で住宅購入しようとする人の数です。
どれだけ優れたスペックの住宅だったとしても、過疎地に建っている家は売るのに苦労します。
築年数が古い住宅であっても、購入検討者の絶対数が多ければ、その条件を魅力的に感じる人に当たる確率が高くなります。
これから家を買う方は、この人口減少社会であっても、人が増え続ける見込みのある街、人口減少が他と比べてもずっと緩やかな街を選択する必要があります。

■ポータルサイトでは街の比較ができない

皆さんは住宅購入しようと思い立った際にはじめに何を行ったでしょうか。
多くの方はポータルサイトで物件情報を検索されたのではないでしょうか。
ポータルサイトの仕様を思い浮かべていただくと、はじめにマンションや戸建て(新築・中古の選択)などの建物種別を選択し、次にエリアを選択すると思います。
この時画面に表示されるのは、単なる選択肢としてのエリアの羅列であって、例えば○○市の平均価格であるとか、自治体サービスを比較検討できるような機能はありません。
つまりどの街にするか?という選択は、住宅購入検討者が予め行っておかなければならないという前提となっています。
ご存じのように、自治体によって享受できる自治体サービスが異なりますし、子育て関連など利用できる補助制度も様々です。
ポータルサイトを入口とする住宅購入では、街の検討が十分になされず、住んだことがある、知っている(憧れている)、職場へのアクセス、子供の学区域など、個人的な理由からエリアを選択するケースが多いのが問題です。
いつでも売れる住宅購入には個人的な理由はほとんど関係しません。

■何気なく選んだその街は消滅可能性都市ではないですか?

少し前に話題になった「消滅可能性都市」という言葉をご存じでしょうか。
2040年に向けて20-39歳の女性の数が半分以上減少し消滅する可能性のある都市を発表したもので、地方だけでなく東京都豊島区が入っていたこともあり、当時かなり有名になったレポートです。
日本は人口減少社会ですと言っても、全国一律に減っていくのではなく、当然ながら地域差が発生します。
人口減少が加速するエリアと、人口減少時代においても人口の増加が見込まれるエリアと極端に分かれていくと言われています。
人口減少エリアの自治体は税収が少なくなるので、今の自治体サービスを維持できなくなります。
行きつく先は自治体経営の破綻です。
財政破綻した北海道夕張市の情報は簡単にインターネットで調べることができますので、自治体が財政破綻するとどうなるのかは、一度確認することをお勧めします。
志を持って再建に向けて尽力されている方には大変申し訳ないのですが、他の自治体と比較するとあえてその街を選ぶ強い想いがなければ、選択できない街と言えます。
自治体の財政と言うとよくニュースに上がるのが京都市です。
一度検討エリアの自治体の財政状況を調べることもお勧めします。

■その街は将来のために今何を行っていますか?

人が集まり続ける街が重要と言っても、将来のことなので判断しにくいと思います。
将来のことだからと言って問題を先送りにしてきた結果が今の超が付くほどの少子高齢社会であって、どれだけ見通しが悪くとも、今やらなければならないことがあります。

広島県安芸高田市をご存じでしょうか。
SNSやyoutubeで積極的な情報発信を行っており、石丸市長と議会の対立が話題となっています。
安芸高田市のすごいところは、安芸高田市に縁も所縁もない人間でも、市長だけでなく市議会議員の名前やキャラクターを良く知っていて、現在安芸高田市が抱える問題に対して、どのように立ち向かおうとしているのかに関心を寄せているところだと思います。
他の自治体でも同様に情報発信を行っているかもしれませんが、話題にならなければ住んでいる地域の人にも見てもらえません。

そんな安芸高田市は前述の消滅可能性都市にリストアップされています。
人口減少問題を抱え、財政健全化が重要であると、厳しい選択も含め必死に対策を講じています。
また、財政が厳しい中でも、これからの街づくりを担う子供への投資を行おうと努力されています。

反面行き過ぎた感が拭えないふるさと納税による収入を効果が不透明な施設建設などに消費してしまっている自治体もあります。
人口減少時代に求められるのは選択と集中なので、住民にとってはこれまで享受できたものが無くなるということになるので、合意を得ることが本当に難しいです。

昔住んでいた馴染みのある街で残念なニュースを耳にしました。
古くなった庁舎の建て替えが必要になり、建て替え予定地が今より駅から遠い場所になるので、アクセスが不便だと反対している地元民が多いというものでした。
自治体は財政の健全化を念頭に計画している様子なのですが(既存用地の売却なども計画されています)、住民の想いは様々なので、当然のように反対意見も出てきてしまいます。
※その街は所謂ベッドタウンというエリアで、大都市近郊ではあるものの楽観できないエリアです。(隣の市が消滅可能性都市にリストアップされました)

変化する方が遥かに困難なため、現状維持・問題の先送りで玉虫色の選択しかできない自治体の方が多く、今動けていない、今選択できていない街は将来的に本当に厳しい状況になることが容易に想像できます。

街の今後を占う指標として、検討しているエリアの自治体は将来に向けて今何を行っているのか?というのは大切な情報なので、検索しても小難しい情報しか出てこないのですが、街選びの一環として時間を割く価値はあると思います。

いつでも売れる住宅購入のためには、今だけでなく将来の展望に目を向ける必要があります。
その上で、自治体が今行っている施策は非常に参考になるので、細かなところまで把握する必要はないのですが、確認することを怠ってはいけません。
正直言って自治体のホームページはわかりにくい作りのところが多いのですが、それでも将来の人口動向をどのように想定しているか(楽観的でないか)、縮小均衡の努力を行っているか、現在の財政状況が悲観的でないかなど、自治体に期待感が持てるかどうかは重要な判断材料だと思います。

調べてみてもよくわからなかったという場合が多いと思いますが、その受けた印象も重要な判断材料です。
積極的な情報発信を行っていない、わかりにくい伝え方でしか発信できない、ということは期待できない自治体と言わざるを得ないからです。
行政があっての家ですから、外れの自治体を引かないというのも、住宅購入においては重要な検討材料になります。

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