火災保険の審査厳格化 築50年超の戸建ては注意が必要?!

■不動産購入時に把握したい「火災保険」とは?

東京海上日動火災保険は築年数が古い住宅を対象に、個人向け火災保険の引き受けを厳しくしました。そもそも火災保険とは、不動産を購入した際に非常に重要な保険の一つです。火災保険は、建物が火災や爆発、落雷、水災などの災害によって被害を受けた場合に、その被害を補償してくれる保険です。主な補償内容には以下のようなものが含まれます。

1.建物の損害: 火災や爆発などによる建物の損害が補償されます。建物の修理や再建の費用が保険金として支払われます。

2.財産の損害: 火災や水災によって家財道具や家具、衣類などが損傷した場合にも、その補償が含まれることがあります。

3.仮住まい費用: 火災などの被害により建物が使えなくなった場合に、一時的な仮住まいとして必要な費用が補償される場合もあります。

4.賠償責任保険: 火災などが隣人の建物にも被害を与えた場合に、その賠償責任を補償する保険も含まれることがあります。

不動産購入時に火災保険に加入することで、万が一の災害による損害から資産を守ることができます。不動産のローンを組む場合、金融機関からも火災保険の加入が要求されることが一般的です。火災保険の内容や補償範囲は保険会社によって異なるため、複数の保険会社から見積もりを取り比較検討することが重要です。また、保険料は建物の価値や地域の火災リスクなどによって異なるため、注意深く選ぶようにしなければなりません。不動産購入時には、火災保険の重要性を理解し、適切な保障内容を確保することで、より安心して不動産を所有することができます。

■今回の「火災保険」の引き受けを厳しくした理由について

東京海上日動火災保険は、築50年超の一戸建ての審査を代理店に任せず、自社で契約条件を決める運用に、5月22日までに切り替えました。災害の多発で損保大手の火災保険は2023年3月期決算で13年連続の赤字となり、経営が厳しい状態が続いています。大手各社は収支改善のために、2024年度に火災保険料を1割超引き上げる見通しで、古い住宅に住む消費者の契約条件は一段と厳しくなっています。もし、不動産購入をされる際、古い中古住宅を希望される方、地方の田舎暮らしで古民家を改修して移住をしようと思われている方は、火災保険料の上昇についても注意が必要です。

築年数が古い個人向け契約を自社で審査する運用に切り替えるのは、東京海上が初めてとなり、対象の住宅の経年劣化の進み具合によっては、契約者が一部を自己負担する免責金額を設定したり、保険金を上乗せして受け取れる特約を付けられなくしたりする対応を取られるようです。

火災保険は一般に火災や風災、水災、盗難といった住まいの損害を広く補償し、保険料は建物の構造や築年数などに基づいて決まっています。本来なら壁のひび割れといった経年劣化の状況を現地で確かめる必要がありますが、業界では代理店が確認しないまま引き受けることも多かったようです。その為、劣化が進んだ住宅は台風など自然災害の際に、損傷が大きくなり、保険金額も膨らむ傾向にあります。建物の損傷が自然災害によるものか、もともと保険金支払いの対象とならない経年劣化なのか判別しにくいという弊害もあり、保険料の支払いの際にトラブル事が多かったようです。

東京海上日動火災保険は築50年超の一戸建ては、築年数が浅い住宅よりも経年劣化が進んでいる可能性が高いと判断。新規契約の際に対象物件の写真を代理店から提出してもらい、現地の支社長が契約の条件を決める運用に改めたそうです。対象物件は年間1万戸程あり、すでに契約している建物の更新は受け付ける方向で調整されています。

■火災保険、自動車保険は赤字状態が続いている…

東京海上日動火災保険が古い住宅の審査を厳しくする背景には、不正請求業者の存在もあります。劣化が進んでいる物件は不正請求のターゲットになりやすく、保険金の支払いがかさめば、結果として新築などリスクの小さな契約者の保険料負担が増えかねません。

保険業界では、自動車保険と並ぶ主力の火災保険で赤字が続いている状態となり、これまでも後追いで保険料を引き上げ、黒字転換を目指してきましたが、2023年3月期決算でも、2022年6月に関東を襲ったひょう災などで保険金支払いが膨らみ、赤字から脱却できませんでした。しかし、火災保険は社会インフラの要素が強いため、古い住宅でも引き受けを断ることはしないようです。東京海上日動火災保険は新たな運用を始めるにあたって、社員に対し、引き受けを拒絶したり、過度に厳しい条件をつけたりするといった対応を避けるよう通知されています。

今回の審査の厳格化や保険料の値上げによって、早期に火災保険の収支が黒字転換できるかは不透明となります。損保各社は規模の大きな災害について、リスクを海外の再保険会社に転嫁して自社の負担を軽減させていますが、再保険会社に支払う再保険料が高騰し、良い条件での再保険購入が困難になっています。再保険によるリスクの移転ができなければ、大規模な自然災害時に保険金支払いが膨らみかねません。

契約者の負担に直結する保険料の引き上げだけでなく、損保各社はデジタル技術の活用によって業務を効率化し、損益分岐点を引き下げる必要があり、業界的にもテクノロジーの活用は必須と言えます。保険引き受けの適正化に加えて、防災や減災の取り組みにも経営資源を割き、予測困難な災害に対しても極力被害を軽減し、結果的に保険金支払いの抑制にもつなげる努力も求められています。

いずれにせよ、古い中古戸建住宅を購入する際には、火災保険の審査が厳しくなっていること、料金の上昇も念頭に置いておいて欲しいと思います。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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