中古住宅の取引活性化に土地・建物に官民共通IDを付与する時代へ

■ 土地や建物の情報を共通IDで一元的に把握できる仕組みは広がるか?!

国土交通省は全国の土地や建物の情報を共通IDで一元的に把握できる仕組みをつくる事が発表されています。民間の売買データベースと国の登記簿などを照合しやすくし、事業者が消費者の求める情報を調べやすくして取引の円滑化・透明化を目指すようです。人工知能(AI)による資産査定など新サービスの普及を促し、中古住宅市場を活性化できれば空き家対策にもつながるとの事です。個人的にはこの仕組みが出来ても、空き家の活性化はIDがあるから普及するものではないかと思いますが、いずれにせよ、流通活性化を目指す中においては新たな第一歩だと思っています。

■ 官民共通IDで流通物件の成約実績も管理できるようになる?!

国土交通省は不動産データを整備し取引活性化を狙う有識者らによる検討会を設け、2021年度中にデータ連携(都内タワーマンション)の指針をまとめ、2022年度からの運用をめざしています。不動産取引で融資する銀行など金融機関にとっても、物件の担保価値を評価しやすくなると見込まれています。

不動産の分野では、流通物件の成約実績を蓄積する事業者用の検索システム「レインズ」が存在しますが、各事業者は管理物件の改修履歴など独自の詳しいデータも持っており、バラバラの情報をひもづけて消費者に提供するのに手間が掛かっています。その業務の解消も官民共通IDで解決していきたい狙いがあります。

また、国の法務局が管理する不動産登記簿にある13ケタの番号の活用を想定しています。業界各社には物件の新規登録やデータ更新の際にIDを反映するよう求める事で対象となる土地・建物は全国2億件超に上ります。

導入には事業者ごとのシステム改修が必要になる見込みですが、登録項目などの詳細は以降の検討会で議論する予定です。登記簿には個人情報も含まれることから、データ連携が個人情報保護法に抵触しないようにルールとなり、官民共通IDにより、今まで以上に不動産流通の活性化に寄与する事を願っています。

日本は中古物件の取引が少なく、背景には「設備の状況や価格の妥当性が分からない」、「人が使ったものは嫌」といった消費者の声もあります。不動産の売買に占める中古の割合は米欧が7~8割なのに対し、日本は1割台にとどまっています。データ連携が進めば事業者は消費者のニーズに応じた様々な情報を網羅的に集めやすくなり、データ量が増え分析も容易になるため、コンピューターが迅速に資産価格を見積もる「AI査定」などの精度も高まります。

政府は中古の利活用を促してきたものの近年はほぼ横ばいとなっており、未だ新築での流通が一般的ではありますが、今後の人口減少の加速をにらみ、空き家対策の観点からも良質な中古住宅が流通しやすい環境の整備が一段と重要になっていくものと存じます。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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