変動金利と固定金利のどちらが良いか?という不毛な議論をそろそろやめませんか?<1>変動金利は安いのか?
住宅購入をする場合に多くの人が利用する住宅ローン。
この住宅ローンをめぐって長らく変動金利が良いか固定金利が良いかの議論が交わされていますが、ここでは一般にあまり触れられていない観点から説明したいと思います。
どちらが良いか?の「良い」を分解する
太郎さん、結局のところ変動金利と固定金利ってどっちが良いんですか?
そういった質問が来た場合は、固定金利にしておいた方が良いよと答えるようにしているよ。
えっ!金利が安い変動金利を勧めるものだと思ってました。
それは住宅会社・不動産仲介会社あるあるだね。
多くの事業者は変動金利を勧めるからね。
じゃあどうして固定金利なんですか?
理由を説明する前に、まずはどちらが良いの「良い」って何だ?って話からすることにしよう。
チュースケは良いって何のことを指していると思う?
それは金利が安いのが良いに決まってますよ。
じゃあ住宅ローンは変動金利の方が良いことになるね。
住宅ローンの善し悪しが金利が高いかどうかだとするなら、固定金利は必要無いね。
固定金利が変動金利より安いことはないからね。
??
安い=良いではないんですか?
詳しくはこれから説明するけど、住宅ローンの善し悪しは金利が高いか低いかだけでは決してない。
ただ、残念ながら今の住宅市場を取り巻く環境が、住宅購入者に金利が高い・低いだけで選択させているように思える。
結論は最初に言ったように、「このような質問をしてくる人には固定金利をお勧めしている」
これに尽きると思う。
変動金利は安いのか?
それでは本題に入ろう。
変動金利と固定金利のどちらが良いか?の良いって何だ?って話だね。
金利が安い方が良いって答えました。
金利が高いか低いかについて、表現を変えると、銀行に支払う金利総額が安いかどうか、つまり金銭的なメリットがあるかどうかって言えるよね。
その通りです。
金利で支払う金額は1円でも安い方が良いに決まってます!
参考までに大手M銀行の2020年8月の住宅ローン金利は変動金利だと0.525%ってホームページに記載があるね。
固定金利の代表格フラット35の2020年8月の最低金利は1.11%だ。※21年以上の場合
仮に3000万円のローンを組んだと仮定すると、変動金利の場合金利の総額はおよそ270万円で、フラット35だと740万円くらいになるね。
※借入期間35年、元利均等
変動金利の方が安いじゃないですか!
変動金利の方がいいですよ!
金利がずっとそのままならね。
M銀行の変動金利の基準金利が2.475%だから、何かの理由で、10年目に2.475%になったと仮定してみよう。
10年間の金利支払い合計が約190万円、残高が2219万円になる。
この2219万円を残りの25年、2.475%で借りたとすると、金利支払い額は826万円になる。
当初10年と合わせると合計で1000万円超えちゃうね。
どっちが得なんだろうね。
でも金利が上がるとは限らないじゃないですか。
実際ここ数年間はずっと安いって聞いたことがあります!
それは市場の話だね。
事実住宅ローン金利は下がる一方で、特にここ数年は史上類を見ないくらい低金利だ。
ちなみに私たちの親世代バブルの頃の金利ってどれくらいかわかる?
わからないです。でも高くても3%とかじゃないんですか?
バブルの頃の金利は8%を超えていたんだよ。
経済ってどうなるかわからないじゃない?
少なくとも今は金利のほぼ底だから、何かあったら上がるしかないとも言えるからね。
この話は次に続くからこの辺にしておいて、言いたいことは、借入段階で支払い総額が確定していないのが変動金利だ。
確定していない以上、借入段階で変動金利の方が金銭的メリットがある、つまりお得であると判断するのはおかしくないか?ってこと。
そう言われるとその通りです…。
だから、変動金利の方が安いから良いってのはおかしいということだ。
結果的にお得になるかは時間が経過しないとわからないからね。
重箱の端をつつくようなことだけど、「金利が安い」って表現が間違いの元だと思う。
現在時点の金利が固定金利に比べると低いだけであって、安いかどうかは結果を見ないと分からないわけだから。
価格は高い⇔安いだけど、金利は高い⇔低いだからね。
変動金利の方が「現在時点の金利が低い」って言い換えるとどうだろう?
なんだかお得感が薄れたような…。
「安い」という言葉のマジックだね。
営業の現場ではお客様へ与える影響を重視するから、変動金利は安いって言っちゃうんだろうね。
消費者は安い方がいいから、本来は現在金利が低いだけなのに、支払い総額が安くなると勘違いしてしまう。
変動金利と固定金利のどちらが良いか?という不毛な議論をそろそろやめませんか?シリーズ第1回でした。
次回は「安心」という観点でご説明いたします。
言葉にすると詭弁のように思えるのですが、「金利が低い」「金利が安い」このちょっとしたニュアンスの違いが、住宅業界を覆うほどの誤認を招いている原因とも言えるのではないでしょうか。