所有者不明土地が減ると取引出来る不動産が増える?!

2月10日、法制審議会(法相の諮問機関)は相続や住所・氏名を変更した時に土地の登記を義務付ける法改正案を答申しました。この結果、相続から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料を科すという仕組みが課せられることになります。所有者不明土地は全体の2割程度に達し、土地の有効活用の弊害になっていました。そもそも所有者不明土地とは、誰が所有しているかがわからない土地で相続の際に親の家や土地の名義変更をせず、長年放置することなどで発生する土地の事です。通常、不動産売買の所有権移転では登記が義務ではないのに比べ、異例の厳しい措置となりそうです。結果、このような措置により、取引できる不動産が増える可能性もあります。

■所有者不明土地を減らす為の民法、不動産登記法改正案などの主なポイントについて

〇土地・建物の相続登記を義務化(相続開始から3年以内に誰が、どれだけ相続するか登記、登記しなければ10万円以下の過料)

〇相続人申告登記制度を新設(登記期限に間に合わない場合、相続人の氏名、住所などを登記)

〇不動産所有者の住所、氏名変更登記を義務化(住所変更などを2年以内に登記、登記しなければ5万円以下の過料)

〇遺産分割協議の期間を設定(相続開始から10年を過ぎると原則法定相続割合で分ける)

〇土地所有権の国庫帰属制度を新設(国が一定の条件を満たす土地を引き取る、相続人が10年分の管理費を負担)

今回の罰則を設ける形で、所有者不明土地を減らそうという試みです。

■いよいよメスが入る、所有者不明土地の減らす試みについて

法制審の総会で民法や不動産登記法などの改正案の要綱を示しました。政府は3月に改正案を閣議決定し、今国会で成立させ、2023年度にも施行する予定です。

いまは相続が発生しても登記は義務ではなく、申請しなくても罰則はありません。土地の価値が低かったり、手続きが面倒と感じたりした場合は放置する例が多いようです。そもそも、登記手続きの流れを把握していない個人も多いというのも現状だと思います。死亡者の名義のまま年月を経れば、所有権の把握は難しくなり、このようような所有者不明土地が増えてしまいます。

所有者が不明の空き家や荒れ地は処分ができず、周辺地の地価が下がったり景観が悪化したりする問題があり、また公共事業や民間の都市開発が一部の所有者不明地のために進まないケースもあります。

法務省によると所有者不明土地が発生する理由の66%は相続登記がないことで、34%が住所変更の不備だと発表しているようです。

改正案では取得を知ってから3年以内に登記を申請しなければ10万円以下の過料を科す。住所変更や結婚などで氏名が変わった場合も、2年以内に申請しなければ5万円以下の過料となるようです。法人が本社の登記変更を届け出ない場合も過料の対象になるようです。

一連の罰則は、法施行後に新たに相続する人らも対象となるようで、施行前の相続などに伴う問題は一定の猶予期間を定めて適用する見通しです。

■所有者不明土地を減らすため、様々な制度改革が進む予定?!

業務が増える事が予想されるため、登記手続きの負担は減らす事が検討されているようです。相続人のうち1人の申し出で登記ができますが、10年間、届け出がなければ行政が法律で定める割合で遺産を配分する「法定相続」にする。相続人が希望しなくても法定相続分の土地を持たされる可能性も出てきます。

今後、行政が住民基本台帳ネットワークで死亡者を把握し、登記に自動的に反映する仕組みもつくるようです。死亡者が名義人だった不動産の一覧情報を発行して親族が簡単に把握できるようにする。

土地やビルなどの建物の共有者が不明でも改修や売却をしやすくする。裁判所の確認を経て公告し、他の共有者の同意で利用目的を変更できる。短期間の賃貸借は共有者の過半数で決められるような流れも作るようです。

裁判所が管理人を選べば、不明の所有者に代わって土地や建物の売却もできる。代金は所有者が判明した場合に備えて供託を予定されています。商業地などでは共有者が分からず、有効利用ができない不動産も多いとのこと。制度が広がれば都市開発が進む可能性もありますので、開発等が進みやすくなるのではないでしょうか?!

今回の法改正が実現すれば、新たな所有者不明土地が生まれることを抑える効果はありそうです。一方で既に所有者が不明になっているへき地の山林などでは、公共事業や民間の開発の対象外なら、引き続き放置される可能性もあり、このような制度改革により、取引できる不動産が増えてくれる事を期待したいです。

今後の参考にお役立て下さい。

法人営業部 犬木 裕

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