マンション購入時に知っておきたい修繕積立金の盲点について

突然ではありますが、修繕資金が不足する分譲マンションが増えている事をご存知でしょうか?資金不足で必要な修繕ができないと建物の老朽化が進み、水漏れなどの事故が発生する確率が高まります。居住環境が悪化するほか、資産価値も落ちてしまうなどの問題も発生します。必要な資金の確保には早めの対策が重要になっています。以前は大規模修繕の業者選定に関する相談・懸念する管理組合は多かったようですが、ここ数年は資金が確保できず、必要な修繕工事ができないといった相談も増えているようです。また、住人の年齢層が上がり、修繕積立金額の引き上げに反対する声が強まるケースが目立っているようです。

■修繕積立金の残高が長期修繕計画に対して不足しているマンションは4割!

マンションは築年数の経過に伴い劣化します。勿論、戸建て住宅もメンテナンスの必要性は同じですが、戸建てまでの内容を解説すると長文となってしまいますので、今回は省略します。住みやすさや資産価値の維持には、定期的な修繕が必須です。しかし、修繕資金が足りない分譲マンションは多く存在します。国土交通省の「マンション総合調査」(2023年度)では、修繕積立金の残高が長期修繕計画に対して不足しているマンションが4割に上りました。修繕積立金はマンションの住民から毎月徴収する仕組みです。資金不足の主な要因の一つとして、積立金の徴収方法を指摘する声は多く存在し、新築マンションでは分譲会社が積立金の徴収方法を決めています。多くの場合、積立金額を段階的に増やす「段階増額積立方式」を採用しています。

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■マンションの積立金額を増やす「段階増額方式」をご存知ですか?

段階増額方式は、新築当初の徴収額は少なく、購入者には魅力的に映ります。しかし一方では、計画通り積立金を増やせるとは限りません。増額が必要な都度、管理組合の総会で過半数の賛成による決議が必要となります。合意できず増額できないケースも多くあります。2023年度のマンション総合調査によると、段階増額方式の管理組合のうち、直近の積立金の増額について「計画通り増額できた」のは約60%あり、「引き上げできたが計画の額までは増額できなかった」が約25%、「増額したかったができなかった」が約5%となっています。計画通り増額できない割合は築年数の経過と共に増える傾向となります。築10〜15年で2割、築20〜25年で3〜4割に達します。

分譲マンションの新規供給戸数が多かったのは、1990年代半ばから2000年代半ばとなります。築20年以上がたち、住民も高齢化する物件が増えています。さすがに年金暮らしになり、収入が減少する世帯が増える為、積立金の増額が難しいケースのマンションが増えます。修繕資金不足に陥らないために、管理組合ができる対策は築年数が浅い段階で早めに積立金の徴収方法を『均等積立方式』に変更することで将来的な資金不足を防げる可能性が高くなります。均等方式は、長期修繕計画に基づき資金確保のために必要な金額を割り出し、毎月一定額を徴収するものです。段階増額より当初の金額は多くなりますが、修繕費用の見通しが変わらなければ途中の増額が不要となり、計画通り資金をためやすい方式と言えます。気になるマンションが出来てた際には、この方式をとられているマンションかどうかの確認をおススメします。

■マンションの積立金不足の前に、将来の展望が重要となる!

必要な修繕の見極めには、長期的な視点も必要となり、長期修繕計画を作る前に、どのようなマンションにしたいか、将来の展望を考える必要があるようです。例えば、100年住めるようにするなど、住民で話し合い、修繕計画などに盛り込むと良いようです。

展望がなく、修繕を行き当たりばったりで決めると住民が後悔する結果になります。例えば敷地内の子どもの遊具が劣化したケースです。新築で入居した多くの家族の子どもは既に巣立ち、不要と考え修繕せず撤去した場合、若い世代の入居が減り、資産価値の低下につながるといったケースは多くあるようです。つまり、今いる人だけの事で判断すると、将来は廃れていく可能性が高いという事です。

修繕資金不足の解決策は住民からの徴収額を上げることと言われますが、資金を増やすためには運用を検討するマンションも増えているようです。2023年度のマンション総合調査によると、徴収した修繕積立金を、低金利の銀行の普通預金に預ける管理組合は77%に上っていたようです。

少しでも額を増やしたいときに活用できるのが、住宅金融支援機構の「マンションすまい・る債」というものがあります。管理組合向けに修繕積立金の運用を目的として販売する債券となります。中途換金時には元本に所定の利息を加えた金額が戻り、手数料もかからないといったものです。2024年度に募集した10年債の利率は、満期までの平均で年0.5%(税引き前)でした。2024年度の募集は、10月11日(金)をもって終了しているようですが、次回の募集開始は2025年春頃を予定しているようです。

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管理計画が適切なら利率を上乗せする制度もあり、地方自治体の「管理計画認定」を取得したマンションは、利率が同0.55%になります。購入額が5000万円なら、10年経過時の受取利息は税引き前で25万円の差が出る計算となります。重要な事として修繕資金は将来必ず使うお金となります。その為、元本が減る可能性のある運用は避けなければなりません。株式や外国債券などは避けた方がいいと思われます。

修繕積立金が不足する場合、マンションが持つ資産を使って「稼ぐ」道を模索する管理組合もあります。例えば、敷地内の空きスペースを有効活用し、ゴルフシミュレーターやトランクルームなどを導入すれば、時間制で有料で貸し出しできます。空きが出た駐車場を外部の個人などに貸し出せば、賃料も得られます。屋上に広告看板を取り付けたり、携帯電話の基地局となるアンテナを設置したりすることでも収入を獲得できる場合もあります。しかし、管理組合が「収益事業から生じた所得」を得ると、法人税が課されます。納税のための計算書類などを税務署に提出する必要があり、専門家に依頼しなくてはならなくなります。税理士に支払う費用などを考慮すると、最終的な収益がマイナスになることもあり、労力に見合わないケースも多いので、注意が必要です。また、安全面で課題も発生します。空きスペースなどを外部に貸せば、入居者以外の人が頻繁に敷地内に入ってくることになり、防犯上の理由も含めて、収益事業を手掛けるべきか、慎重に判断すべきです。大規模修繕工事などの費用を他の手段で手当てできるなら、収益事業をわざわざ手掛ける必要はありません。早い段階から、長期的な視点で資金計画を練っていくことがまずは重要になりますので、これからマンション購入を検討している方には「修繕積立金」について、重要視していただきたいと思います。

今後の参考にお役立てください。

法人部 犬木 裕

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