家の買い時を考える
よくお客様から家の買い時はいつですか?というような質問をいただきます。
今でしょ!というのは少し古いかもしれませんが、経験上、先延ばしにして良かったことがあまりないのも事実です。
今回はいくつかのシチュエーションで家の買い時というのを探ってみます。
□景気が良い時、悪い時
家の買い時の話題になる場合にテーマとなるのは景気の善し悪しです。
語弊を恐れず申し上げると、家を買うと決めたのなら、景気の善し悪しはあまり関係ありません。(もちろん人それぞれ状況によりますが、玉虫色の書き方だとおもしろくないので、勇気を出して言い切りました!)
理由を二つほど挙げます。
一つ目ですが、不動産には資産としての側面があるのですが、不動産に関係する経済事情は為替や株などその他の金融資産に比べると急激な変動が発生しないからです。
例えば2008年のリーマンショックで世界経済は大打撃を受けましたが、そのような大事件でも急激に不動産価値が下がったり、住宅ローン金利が急上昇するようなことは起きませんでした。
もちろん不動産が無関係という訳ではありません。その時々の経済状況の影響を受け、緩やかにじわじわと変動していきます。
経済状況の動きを見ながら買い時を探っても、あまりに変動が緩やかなので時間だけが無駄に過ぎてしまいます。
二つ目は金利の動向です。
日本では長らく続いたゼロ金利政策が終焉を迎え、これから徐々に金利のある世界に戻っていくと言われています。
金利は経済状況の影響を大きく受けるため、景気の善し悪しが気になるところですが、金利が低い時を狙って住宅購入するというのは非常に難しいと言えます。
金利の最高値も底値も結果論でしかないからです。
例えば全期間固定金利のフラット35は、2016年8月が最低金利となります。その時期に「金利はもう最低水準だから今がお勧め」「全期間固定でこの金利はあり得ない」としきりに話題になったものですが、まだ下がるのでは?と決断できなかったり、変動金利を選んだりする人がいました。
この記事を読んでいる皆さまも同じです。
今から1年前を考えると、当時は金利がない世界だったわけで、金利の面で言うと今よりお得だった時期と言えます。
ですが購入には踏み切れていません。
今だってそうです。
これから徐々に金利のある世界に戻っていくのなら、購入時期は早いに越したことはないという判断になります。
また、これから金利上昇が懸念される時期は固定金利を選択するのがセオリーなのですが、未だに圧倒的多くの方が変動金利を選択します。
そもそも変動金利を選択するのであれば、金利は変動する訳ですから、金利が低い時期を狙うというのはあまり意味がありません。
金利の動向で言えばこれまで20年以上に渡って超が付くほどの低水準だったことの方が異常事態で、長い返済期間の最中には、金利が上がることもあれば下がることもあることを受け入れることが、変動金利を選択するということになります。
文頭で「家を買うと決めたのなら」と記載しました。
景気の善し悪し(周辺環境だけでなくご自身の収入面も含めて)で検討するのは、購入しても大丈夫かどうかということであって、購入すると決めた、もしくは将来的には家を買いたいとお考えの方は、景気の善し悪しは家の買い時にはあまり関係ないことになります。
□子育てのための住宅購入は買い時を選べない
住宅購入の理由で子育てを挙げる方が多いです。
子供が大きくなった時に部屋を用意してあげるという考えから、3LDK~4LDKの所謂ファミリータイプと呼ばれる間取りを検討されているかもしれません。
子育てのための住宅購入をお考えの場合は、買い時云々ではなく、スペースを有効活用するなら速いに越したことはないという判断になります。
子供は大人になったらやがて独立します。
子供部屋と言うのが非常に厄介で、小分けにされた間取りは子育て以外には使いにくい家と言わざるを得ません。
皆さまのご実家を想像してください。
皆さまがかつて子供部屋として使っていたスペースは、今はどのように利用されているでしょうか。
物置になっているか、もしかすると皆さんが過ごされていたそのままになっていることもあるかもしれません。
お子様の年齢を踏まえて、お子様がどれくらいの期間家にいるのかを考えれば、家の買い時なんて選べないことが明白です。
子供が小学生になったら、中学生になったら、と購入時期をお考えになる方がいらっしゃいますが、家を買うと決めたのなら(将来的に家を買いたいのであれば)購入時期は早ければ早いほど有効活用できる時期が長くなります。
本来であれば子育てが終わった家は売却して、夫婦がその後を過ごすのに最適なサイズの家に住み替えるのが合理的ですが、日本には実家という呪いのような概念があり、経済的にではなく心情的に住み替えができなくなっているのが実情です。
子育てが終わったら売却することが明確な場合は、居住期間が長くなればなるほど資産価値が目減りするリスクがありますので、ライフイベントを考慮した買い時を気にしても良いかもしれませんが、賃貸と違って住宅購入は希望の時期にピッタリ購入できるというわけではなく、逆に期限に追われて最適ではない住宅を選ばざるを得ないことも考えられるので、やはり遅いよりかは早い方が良いと思います。
□「安い時に買う」は危険
買い時という言葉を使う場合に、価格が安いタイミングを指すことがあります。
しかし、昨今の住宅市場を鑑みて、安い時を狙うのはあまり現実的とは言えません。
不動産は価格が高いほど資産価値を維持しやすいという特徴があるため、安さに重きを置く住宅購入は、むしろ危険な考え方とも言えます。
安い時を狙うのが難しい理由は物価上昇です。
バブル崩壊から失われた30年と言われてきましたが、金利は異常なほど低水準で、可処分所得は下がる一方です。そして物価は30年間対して上がってきませんでした。
食料品や生活必需品の値上げのニュースが毎月のように報道され、給料は対して上がってないのにモノの値段だけが上がっていると感じている方も少なくないと思います。
日本は経済成長のために物価上昇を目指していて、物価が上がるということは建築にかかるコストも上がり、不動産価格も上昇します。
一般消費者がタイミングを見極めるのは難しいですが、物価が上がる前というのは、間違いなく家の買い時と言えます。
つまり、安く買うことを重視したい方は、早く購入した方が良いという判断となります。
こういった状況で安く買おうという考えが危険なのは、既に物価上昇は始まっているので、イメージされている普通の物件は割高に見えるからです。
安さを追求するがあまり、今後の資産価値の維持が難しくなる地域の物件や、安易に旧耐震の物件などに目が行ってしまいます。
現在進行形で、しかも世界規模での経済不安定が続いているので、特に今の時期に住宅購入を検討される場合は、資金計画をしっかり検討することをお勧めします。
□結局のところ買った時が買い時だったと納得する
一般に不動産の買い時は「金利が安い時」「不動産価格(相場)が安い時」「物価が上がる前」と言われますが、狙って購入するのは難しいというのがこれまでの説明でご理解いただけたと思います。
身も蓋もない言い方になりますが、あれこれ悩むよりも結局のところ買った時が買い時だったと、無理やりでも納得せざるを得ないのが現実です。
バブルと言われる時期、住宅ローンの変動金利は最大8.5%の高水準でした。
土地値も高騰し、郊外の住宅が今では考えられないような金額で販売されていました。
当時はまだ家が足りない状況だったため、その頃の人達はそんな状況でも家を購入していました。
10年も待てば状況は大きく変わったのですが、ライフイベントにおける10年は非常に長い期間で、人生の計画を大きく変える必要がありましたし、何より誰も景気が悪くなるなんて思いもしなかったからバブルと言われた訳で、結局のところ無理やりにでもあの時が買い時だったと納得せざるを得なかったのです。
今の経済状況では、お金の面を考えてあれこれ検討するがあまり時間を無駄に消費しても「あの時に買っておけばよかった」という結果になりがちで、冒頭にも記載しましたが「家を買うと決めたら」「将来的に家を買いたい人」は、いつ買うかよりも、なるべく早く購入した方が良いと言えます。
ただしこの「買った時が買い時だった」には一つだけ条件があります。
それはいつでも売ることができる家を買うということです。
先ほどバブルの頃を例に挙げましたが、買った家を売って住み替えるというのは、住宅購入=新築だった当時はできなかったことです。
令和になった今は当時に比べても中古住宅流通市場が発達しているので、将来の売却を想定して住宅購入することは当たり前ですし、何より困った時に家を売ってリセットできるのは、令和時代の住宅購入ならではの安心材料です。
いつでも売ることができる家を購入するためには、自分にとって100点ではなく、自分にとっても他人にとっても60点が取れる判断が必要です。
特にインターネットの物件広告を見ることから住宅購入を始めた方にとっては、なかなか考えを改めることができない部分も多いので、今回の記事をご覧になって「いつでも売ることができる家」に少しでも興味を持った方は、まずはお気軽にご相談ください。