住宅ローン減税が使えない物件があるってご存じですか?
住宅ローン減税は住宅ローンを組んで住宅購入などを行った場合に、一定期間所得税や住民税の控除が受けられる制度で、住宅購入者にとって無視できない重要な制度です。
2022年度の税制改正で使いやすくなったものの、家を買ったら漏れなく使える制度だと勘違いされる方が多いので、住宅ローン減税で困らないように、今回は物件探しの段階で気を付けるポイントをご説明いたします。
住宅ローン減税には要件があります
住宅ローン減税は国の制度なので、制度を利用するには要件が定められています。
引き渡しから6か月以内に居住しなければならない居住要件や、合計所得が2000万円以下であるという所得要件などです。
今回の記事では物件をテーマになりますので、物件に関する要件としては、築年数と広さの要件があります。
まず広さですが、「対象となる住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上が自身の居住用であること」と定められています。
3LDK~4LDKのファミリー向けの住宅を検討されている方はあまり気にしなくても良いのですが、ご夫婦のみで住む、もしくは単身の場合は、広さの要件に抵触してしまうことも考えられます。
また、店舗併用住宅など居住目的以外のスペースを含む物件を検討している方は、住宅ローンの審査でも注意が必要なのですが、ご自身の居住スペースが1/2以上必要ということをうっかり失念しがちなのでご注意ください。
築年数の要件
これまで耐火住宅(マンションなど)は築25年以内、非耐火住宅(木造など)は築20年以内という要件がありましたが、2022年の税制改正で「1982年1月1日以降に建築された住宅」に緩和され、中古住宅購入時にも住宅ローン減税が利用しやすくなりました。
具体的には謄本に記載の日付が1982年1月1日以降であれば良い、とされます。
それ以前の建物の場合は、これまで通り、現行の耐震基準を満たすことを証明する「耐震基準適合証明書」を取得しないと住宅ローン減税の対象になりません。
旧耐震物件は何かしらの耐震改修工事を行わないといけないと判断されるケースが多く、また、耐震診断や耐震改修に費用がかかるため、住宅ローン減税を目的に耐震改修を行うのは現実的ではありません。
予算の関係で古めの住宅を検討されている方は、建築年月に注意が必要です。
省エネ、買取再販に注意
2022年の税制改正で、省エネ基準をクリアした住宅は最大控除額が大きくなる制度になりました。
控除される金額が大きい方が良いので、省エネ住宅の基準に関心を寄せる方が多いのですが、省エネ基準は創設されてからそれほど年数が経過しているわけではないので、中古住宅をご検討の場合は、現況で省エネ基準を満たす住宅はそれほど多いわけではありません。
制度適用可否は省エネ性能に関する証明書の有無で判断しますので、築浅物件を検討する場合は、不動産会社に「住宅ローン減税の手続きで必要な省エネ性能の証明書があるか?」と確認した方が良いです。
省エネ基準の証明書は後付けで簡単に取得できるものではないので、基本的に、新築時に証明書が発行されているかどうかが判断の基準となります。
続いて買取再販ですが、住宅ローン減税で定める買取再販と、一般的な買取再販の定義が異なるので注意が必要です。
一般に買取再販とは、事業者が売主となる物件を指すことが多いですが、住宅ローン減税における買取再販は、事業者がリフォームしていること、築10年以上であること、建物価格に対しリフォーム費用が20%以上であること、など細かな要件が定められています。
事業者が売主の物件を検討する場合は、「住宅ローン減税における買取再販に該当するか」を不動産会社に確認しましょう。
住宅ローン減税OK=新耐震ではありません
もう一度築年数の要件に戻ります。
2022年の税制改正でもっとも注意が必要な点です。
中古住宅の場合、現行の耐震基準を満たすことが要件です。耐震診断で証明しないと制度が利用できないとなると不便なので、便宜上、1982年1月1日以降の建物は現行の耐震基準を満たすとみなしているだけです。
細かな話になりますが、新耐震・旧耐震の区分は複数あります。
最も有名なのは1981年6月1日以降が新耐震という考え方です。多くの制度がこの区分を利用しています。
ここでいう1981年6月1日は建物が完成したタイミングではなく、行政によって建築確認された日付です。1981年6月1日に耐震性に関する改正が行われた建築基準法が施行されたため、それ以後に建築確認された建物はこの基準をクリアしていると認識されます。
ここで問題になるのが、1981年6月1日以降に建築確認されたことを証明する方法です。新築時の建築確認済証など行政の文書が残っている場合は確認できるのですが、それらの書類を紛失してしまっている場合は謄本でしか建築年月を確認できません。
謄本記載の年月日は建物の完成年月日なので、謄本の日付が1981年6月1日以降だからといって新耐震とは判断されません。
謄本しか残されていない物件は、1983年4月1日以降の建物が新耐震基準とみなされます。
具体例を挙げます。
謄本の日付が1982年1月10日の物件を購入したとします。
謄本の日付が1982年1月1日以降なので住宅ローン減税の築後年数要件には抵触しませんが、建築確認日を公の文書で確認できないので、この物件は旧耐震扱いとなります。
住宅ローン減税に限らず、住宅取得時の補助制度・支援制度は様々ですが、「新耐震物件を取得すること」という要件の制度は利用できないことになります。
2022年の税制改正までは築後年数要件を超える場合は耐震基準適合証明書が必要で、住宅ローン減税と耐震性の関係が深く、セットで記憶している不動産会社も多く、住宅ローン減税OK=新耐震と誤った判断を行う方がいますので、1983年3月以前の建物を検討する場合は、十分に注意する必要があります。
SelFinを使えば簡単に気が付くことができます
セルフインスペクションWEBアプリ「SelFin(セルフィン)」は、不動産広告情報から物件の善し悪しを自動で判定するツールです。
この記事でご紹介した、1981年6月以降1983年3月までの微妙な年代の物件の場合は、判定結果にアラート表示されます。
古い物件なので、買ってから制度が利用できないことに気が付いて困った!というのは稀なケースだと思いますが、物件を見に行ったり、不動産会社に問い合わせをしてから、旧耐震だから住宅ローン減税が難しいと判明すると、無駄な動きになってがっかりしてしまいます。
もちろん購入したい物件を絞り込む際にもご活用いただけるのですが、物件探しの段階で、ポータルサイトの広告ページをたくさん見る段階でのSelFinの活用をお勧めいたします。
買付申込前に不動産会社に相談しましょう
住宅ローン減税は不動産売買契約とは直接の関係がない制度です。本来であれば税制の問題なので、税理士や役所へ相談するべきなのですが、不動産会社としても営業上無視できない重要な制度なので、しっかりと情報収集しているケースが多いです。
不動産売買契約を締結してしまうと、「今から言っても遅い」という状況も考えられますので、住宅ローン減税だけでなく、利用したい制度がある場合は、買付申込前に「この物件で制度を利用できますか?」と不動産会社に相談することをお勧めいたします。