家のカギがサービス終了?IOTの便利さの裏側

2023年5月8日にスマートロックを提供しているソニーグループ子会社のQrioからQrio Smart Lock(Q-SL1)のサービス終了に関する発表があり、家のカギがサービス終了?とSNSなどで話題になりました。
この製品はスマートフォンで家の鍵の開閉を行うもので、IOT機器として話題になりました。

■不動産会社の救世主?

スマートロックは玄関ドアに設置する機械です。bluetoothを使って、カギを使わなくても、機械に許可されたスマートフォンが近づくだけで解錠される仕組みです。
特にbluetooth4.0移行、消費電力が抑えられるようになったので、様々なスマートロックがリリースされるようになりました。
とある住設メーカーもスマートロック機能を搭載した玄関ドアを販売していたり、イメージとしては車のキーレスエントリーのような使用感(両手がふさがっていてもカギが開くなど)をアピールしています。

今回話題になったQrioは不動産会社にとっては救世主になり得ると業界で話題になった製品です。

不動産会社の業務の中に、預かっている物件のカギの管理があります。
お客様から内見の要望があると、実際に物件に行ってカギを開けなければなりません。
別の不動産会社がお客様を連れてきた場合は、その不動産会社を信用してカギの貸し出しを行ったりするのですが、このカギのやり取りが無駄で、なんとか省力化できないものかと頭を悩ませていました。

そこに登場したのがスマートロックです。
利用するユーザーは専用のアプリをスマートフォンへインストールしておかなければならないのですが、カギを管理する不動産会社は、内見を希望するユーザーを許可するだけで、カギの開け閉めを管理できます。
カギを開けるためだけに物件に行かなくても良くなります。

また、カギの貸出の際にカギが紛失されてしまったり、案内を行った不動産会社がカギを閉め忘れたりするミスも懸念されます。
スマートロックを利用するとこうしたミスも発生しなくなるので、特に不動産賃貸をメインに取り扱う事業者にとっては救世主とも言える存在になりました。
※民泊施設などでも利用されているようです。

■IOT機器は維持費がかかる

Qrio Smart Lock(Q-SL1)のサービス終了の要因は、買い切りだったためと言われます。商品購入時に費用を支払うと、後から支払いが発生しない形態です。メーカーとしては販売時に利益は得られるものの、その後の収益が全くない状態です。
IOT機器なので、機器の運用上、インターネットを介するプロセスが必要です。
Qrioも専用サイトでユーザーの承認などを管理する仕組みです。
また、セキュリティのリスク軽減のため、インターネットを介してソフトウェアのアップデートができる仕組みになっているものが多いです。

インターネットを介するということは、運営側にはシステムの維持費がかかります。
買い切りであっても維持費を飲み込むことができる計画なら良いのですが、スマートロックは言ってしまえば単なるカギでしかなく、新製品が出たからと言って商品を買い替えるほどのものではなかったため、販売開始から時間が経過するとともに、維持費が重くのしかかり、今回のようなサービス終了に繋がったと思われます。

■タンクレストイレはやめた方がいい?

話は変わって、少し前に「タンクレストイレはやめた方がいい」という話題がありました。タンクレストイレが故障してしまうと、故障した部分だけでなくトイレ全部の交換が必要になり、メンテナンス費用が高額になるためです。

トイレの洗浄機能が故障した場合、便器と一体になっていない普通のトイレであれば、便座を交換すれば良いだけなのですが、タンクレストイレは便座とトイレが一体になっているので、部分交換が難しく、全部を取り替えなければならないようです。

洗浄機能付き便座は10年が目安と言われます。
今は違うかもしれませんが、とあるメーカーの製品は10年くらいになるとメンテナンスランプが点滅する仕様になっていて、メーカーのサービスマンを呼ばないと消せない仕組みになっていました。
私の家に設置した便座がそうだったのですが、結局12年くらいで故障して交換しました。
10年くらいで全部を交換しなければならないとなると、確かに高額で、別にタンクありトイレでもいいじゃないか、という意見にもうなずけます。

別のメーカーからレバー操作をしなくても水を出したり止めたりできる水栓が販売されていますが、これも同様です。
再度私の家のことで恐縮ですが、我が家のキッチンの水栓は、先ほどの便座と同時期に故障し、交換しました。

もともとライフサイクルの長いアイテムでも、新規に追加した機能の部分が壊れやすく、結果的に買い替えのスパンが短くなってしまうという、家電でもよくある話です。

賃貸の場合は設備についてメンテナンスは大家さんの責任になるのですが、購入した場合は所有者の責任です。
住宅のメンテナンスを意識して日頃から点検などを行っている方は別ですが、住宅購入時のリフォームで安易に高機能な商品に手を出してしまうと、後々困ることになりかねないので、よく情報を拾った方が良いです。

■便利さや流行に飛びつくのではなく、製品のライフサイクルに目を向ける

再びカギの話に戻ります。
Qrio Smart Lock(Q-SL1)はサービス終了となるのですが、機械としてのスマートロックは機能しなくなるわけではありません。
しかしメーカーはセキュリティの観点からサービス終了後の使用は控えて欲しい、と言っています。
ユーザーは新商品へ買い替えを行わなければなりません。
カギとしての機能は生きているのに買い替えなければならないのは少し納得がいきませんね。

スマートロックは後付けのタイプが主流なので、使えなくなったら外せば良いだけなので、IOT機器として購入した方には理解があるかもしれませんが、単なる便利なカギとして購入した方は、カギは本来設置したらずっと使える設備という認識があるので、冒頭に書いたようなカギがサービス終了って?という感想になるのもうなずけます。

インターネットを使った技術が進歩し(これからはAIが主流になるでしょう)私たちの生活も便利になりつつあるのですが、その便利さを与えてくれる製品は、私たちが想定しているようなライフサイクルなのか?故障したらどうなるのか?をよく検討して導入した方が良さそうです。
特に故障の際に高額な費用が必要な製品は、交換コストも含めてその製品を選択する魅力があるかを検討されることをお勧めします。

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