「負」動産の恐怖
最近では、遊休不動産、所有者不明土地、そして所有しているだけで負債になる「負」動産という言葉も珍しいものではなくなってしまいました。
今回は、実際にご相談いただいた「負」動産のケースをご紹介します。
【かつては誰もが憧れるリゾートマンション】
都内に住むAさんにご相談いただいた物件は、関東近県のリゾートマンションでした。
マンション内には、大浴場に露天風呂、サウナ、テニスコートなどの充実した娯楽施設もあり、スキー場までは徒歩3分という、まさに理想的なリゾートを満喫できる物件です。
ところが、最近ではAさんも高齢になり、スキーをする機会はめっきり減ってしまい、またお子様たちもスキーをしない、ということで、ほとんど使わなくなってしまっていたようです。
そして、このマンションを所有していることの最大のデメリットが、維持管理費がとても高い、という点です。
充実した設備も仇になり、全く使わずに所有しているだけで月々6万円以上の出費となっていたのです。
まさに所有していること自体が負債となる「負」動産になってしまっていました。
【難航する売却手続き】
もうこのマンションを持ち続ける意味がないと判断したAさんは、ついにこの物件の売却を決めました。
ご相談いただき、実際に販売活動に取り掛かってみましたが、なんと同じマンションで、大量の住戸が売りに出されていたのです。
そしてその金額も買った時の20分の1以下。
中には「30万円」という販売物件もありました。
売り物件が大量にある、ということで、Aさんの物件についても希少価値がなくなってしまい、販売価格を押下げてしまいます。
さらに、管理費・修繕積立金を滞納している住戸も多数あるということでしたので、今後、共用施設が適切に管理運営されるのかも不安です。
金額の高い安いだけでなく、マンション自体の運営にも疑問符が付く物件になってしまっていたのです。
【不動産は捨てられない】
不動産の難しいところは、捨てることができない、という点です。
例えば乗らなくなった自動車などは、お金をかければ廃棄処分などができます。
ところが、不動産には「廃棄する」、「処分する」といった手続きがありません。
自分が死んだあとも相続により、子供たちに受け継がれてしまいます。
相続に関しては、不動産の放棄ができる制度を創設しようという動きはありますが、まだ実現していません。
【値下がりしにくい物件を選択する】
弊社では、物件購入時に何よりも「将来値下がりしないこと」「資産性」を重視することを皆様にお勧めしています。
人口減少が止まらない日本では、住まいの需要が減っていくことが決定的です。
もし需要がなくなってしまう地方、エリアの物件を買ってしまった場合、将来的には捨てられない「負」動産となってしまうかもしれません。
最近では、テレワークの普及により、地方物件の需要が高まっているという報道もありますが、地方で物件選びをするとしても、ただ「人がいない静かな環境」という視点だけで選ぶことはおすすめしません。
将来的には、人がいなくなり、ガス水道電気などのライフラインの供給が止まり、固定資産税だけを支払続けることにもなりかねません。
ぜひ、出口戦略も含めた不動産選びを視野に入れていただければと思います。