住宅購入で最も重要なのは街選び

今年も3月11日を迎えました。東日本大震災で被害に遭われた方に想いを寄せるとともに、日本は災害大国であることを改めて認識する大切な1日です。
住宅購入時はたくさんのことを判断しなければならないので、どうしても防災関連は優先度が下がってしまうのですが、最も重要なのは街選びです。
今回は住宅購入時に検討していただきたい防災についてご説明いたします。

ハザードマップで警戒エリアに住むということ

阪神淡路大震災や東日本大震災のような節目の日に防災に関するニュースが多く報道されますが、たびたび紹介されるのがハザードマップです。

国土地理院ハザードマップ
https://disaportal.gsi.go.jp/

洪水や津波、土砂災害などの危険度を知ることができます。

例えば津波の警戒レベルの高い地域に住むということはどういうことなのでしょうか。
日本では頻繁に地震が発生していますが、比較的大きな揺れの場合に津波警報が発令されることがあります。
津波警戒区域に住んでいる方は、大きな揺れを感じたらすぐに高台へ避難しなければなりません。
しかし、ご存じのように被害が発生するほどの津波は稀です。防災意識が高いうちは外れとわかっていてもとりあえず避難行動を取ることができるのですが、そのうちに「また外れだろう」「面倒くさい」ということで避難行動を取ることが難しくなってきます。

東日本大震災で釜石の奇跡というエピソードがあります。

総務省消防庁 釜石の奇跡
https://www.fdma.go.jp/relocation/e-college/cat63/cat39/cat22/3.html

釜石市の大槌湾に面した鵜住居地区も、津波で壊滅状態となりましたが、この地区の鵜住居小学校と釜石東中学校にいた児童・生徒約570人は、全員無事に避難することができました。
この地域で日ごろから行われていた防災教育を学んだ子どもたちが自分たちの普段から行っている行動を当たり前に実践した結果が起こしたものです。

こうした防災教育は津波被害が想定されるエリアで行われています。

メーテレ 「てんでんこのうた ~大津波から命を守れ~」
https://www.nagoyatv.com/document/backnumber/130407/

「空振り」ではない、「素振り」なんだ、と津波の警戒レベルの高い地域に住む方は、常に高い防災意識を維持しなければなりません。

住宅購入は事前防災の最大のチャンス

避難グッズを揃えたり、地震保険に加入するというような行為は、被害が発生した後に対する対策なので「事後防災」と言われます。
対して災害が発生しても被害に遭わないように対策することを「事前防災」と呼びます。
ニュースなどでよく報道されるのは事後防災が多く、そういった報道から防災対策に関心を持っても、事後防災ばかり対策して、事前防災が検討されていないことがよくあります。

事前防災にも様々ありますが、最大のチャンスと言えるのが住み替えです。津波であれば高台に住む、地震であれば耐震性の高い住宅に住むなど、なるべく被害に遭わない住宅を選択することは、非常に効果の高い事前防災になります。

しかし、地震も津波も洪水も全て考慮した上で安全なエリアを探そうとしても、そんなエリアはなかなか見つからないということがハザードマップを見るとよくわかります。
被害を未然に防ぐエリア選びは簡単ではないのですが、だからといって災害リスクを全く無視して住宅購入するのは推奨できません。

比較的影響の大きな土砂災害や津波などの警戒区域では、売買契約にあたって行われる重要事項説明の説明項目になっていますが、購入者が注意していないと、書かれてあることをさらっと流してしまう場合も多いのが実情です。

土砂災害警戒区域内の住宅を選ぶということは、土砂災害が発生してもおかしくない家をあえて選択した、と同義です。
洪水・土砂災害・津波など実際の被害があったエリアで住宅購入する場合は、ハザードマップをよく見て、発生しうる被害と、そこに住むことで強いられること(地震が発生するたびに高台へ避難するなど)を踏まえた上で、本当にその家で良いのかを判断しなければなりません。

耐震性を甘く見ない

建物の耐震性も重要です。1981年6月以降に建築確認された建物を「新耐震」、それ以前の建物を「旧耐震」と区分しますが、価格が安いからと言って安易に「旧耐震」を選択するのは間違いです。
売り出し価格こそ安く見えるかもしれませんが、旧耐震の物件は耐震改修などの改修工事が必要となる、リフォームにお金のかかる物件です。旧耐震物件は安い、は間違った判断です。

別の記事でも記載しましたが、2023年2月6日に発生したトルコ地震で大きな被害の原因とされるのが、行政の処分免除と言われています。
安全基準を満たさない建築物でも一定の金額を支払えば法的に見逃されるという仕組みです。建て替えや耐震改修にかかる費用が現実的に負担できないという経済的な理由から運用されてきたと思われますが、実際の被害状況を見ると誤った判断だったと言わざるを得ません。

このことは遠い国の出来事ではなく日本でも考えられます。
先に述べた「旧耐震」の建物は、既存不適格住宅と言われ、耐震診断や耐震改修などの対策が必要な建物なのですが、その実施は義務ではないため、耐震対策が未実施の物件が普通に売買されているのが実情です。
物件価格が安い、改修費用が用意できないなど、経済的な理由を優先して、耐震性をないがしろにしてしまうのは、トルコ地震における「処分免除」と本質的に同じ判断をしてしまうことになるので、これから住宅購入を行う方で、トルコ地震の被害状況をテレビで見て少しでも恐ろしいと感じた人は、耐震性を甘く見る判断を行ってはいけません。

防災の話は「やってはいけない」「やらなければならない」などあまり楽しい判断ではありません。
また、大きな災害が発生した時は報道で良く目にするので防災意識が高まるのですが、時間が経過すると優先度が下がってしまうのも事実です。
災害大国日本に住んでいる以上、防災を避けて通れません。日常的な防災対策をご家族で共有していただきたいとともに、どの街に住むか?はご家族の安全性を左右する重要な判断なので、防災を甘く見た判断を行わないようにご注意ください。

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