戸建てリノベ物件を安心して購入するコツ

リノベーションという単語が一般に浸透してだいぶ経過します。
略称で「リノベ」とか、リノベ物件といった使われ方もしています。
リノベーションの使われ方が広く、不動産取引に関わらずリフォームのことをリノベーションと言っている事業者もあれば、事業者による買い取り再販物件のことをリノベ物件と呼んでいる事業者もあります。
今回は不動産取引において売却のためにリフォームが実施された物件のことをリノベ物件と呼び、リノベ物件の中でも戸建て住宅を検討する際に気を付けたいポイントをご紹介します。

■まずは売主のチェック

不動産売買における売主は「個人」もしくは「宅建業者」のいずれかになります。※イレギュラーはあります。
物件を購入するので、売主がどうなのかあまり気にされない方が多いのですが、法的な責任が異なるので売主が「個人」なのか「宅建業者」なのかは必ず確認してください。
担当の不動産会社に聞けばすぐに回答が得られます。
売主が宅建業者の場合、売主である事業者は2年の瑕疵担保責任を負うことになります。
売主が個人の場合は瑕疵担保責任の期間が明確ではありません。
リノベ物件で売主による保証が付いている物件があるのは、この瑕疵担保責任が根拠になっています。

ちなみにこの瑕疵担保責任は新築の場合は10年間となっています。
期間の違いはあれども、売主である事業者に何かしらの責任がかかっているのは安心材料であると思われる方がいらっしゃると思いますが、それは大きな間違いです。
供給側の事業者が倒産してしまうと、その責任を追及することができなくなるからです。

新築を多く供給していたビルダーの倒産があり、瑕疵担保責任の問題が社会問題となり、結果的に、新築を供給する事業者は、新築時に瑕疵担保責任保険に加入するか、供託することが義務化されることとなります。
事業者の倒産によるトラブルなどが発生しても、予め解決のための資力が確保されていれば消費者の安全が担保されるという仕組みです。

中古取引に利用できる既存住宅売買瑕疵保険という仕組みもあるのですが、新築は事業者に義務化されているのですが、中古取引は任意となります。
従って中古取引で安心を得るには、任意である既存住宅売買瑕疵保険が利用できる物件なのかどうかを確認する必要があります。

また、売主が事業者の場合は、売主である事業者が既存住宅売買瑕疵保険に加入するという手続きになりますが、売主が個人の場合は、売主でも買主でも既存住宅売買瑕疵保険の手続きを行うことができます。
売主が事業者の場合は、売主である事業者しか瑕疵保険の手続きができないという点が非常に重要なので、気になる物件が見つかったら、売主が個人なのか宅建業者なのかをまず確認する必要があります。

■事業者によって異なる保証の範囲

売主が宅建業者であるリノベ物件には何かしらの保証が付いていることがありますが、その保証の範囲は様々です。
また、先ほど既存住宅売買瑕疵保険をご紹介しましたが、住宅すべてが対象ではなく、この辺りがなかなか分かりにくい仕組みなのでご説明いたします。

まず既存住宅売買瑕疵保険ですが、瑕疵保険の範囲は基本的に構造躯体と雨水の侵入となります。※瑕疵保険法人の商品で若干異なるものもございます。
一般の方の認識とのズレが大きいのが「住宅設備は瑕疵保険の範囲ではない」ということです。
この記事のタイトルが「戸建てリノベ物件」としているのは、マンションの場合、瑕疵保険の範囲がほとんど共用部分なので、瑕疵保険に対する考え方が戸建てと大きく異なるためです。

売主が宅建業者であるリノベ物件の保証ですが、大きく分けると、瑕疵保険の範囲、リフォームを実施した範囲、リフォームを実施していない部分に分かれます。
リフォームを実施した部分についてはリフォーム工事に対する保険がかかっていることが多いようです。期間は1年~2年程度です。
問題なのがリフォームを実施していない部分です。
中古住宅であることが前提のため、売主である事業者にしても、リフォーム工事を行っていない部分まですべて責任を負うのは重たく感じてしまいます。
このリフォームを実施していない部分の取り扱いは事業者によってかなり差が出ますので、売買契約前によく確認しておいた方が良いでしょう。
リノベ物件の場合、保証の範囲を明示した書面が発行されることが多いのですが、契約当日にいきなり言われても反応できないので、保証の範囲は早めに出してもらうように頼んでおきましょう。

リフォーム工事を行っていない部分のうち、住宅設備については、設備に対する保険商品があるので、そういった保険を利用しているケースもありますし、リフォームを実施した部分についても、家電の延長保証のような仕組みもあるので、どれくらいの保証内容なのかはしっかり確認した方が良いです。

もう一度瑕疵保険に戻ります。
気になる物件が見つかったら、「既存住宅売買瑕疵保険に加入してもらえるか」を確認してください。
理由を付けて瑕疵保険に加入しない(できない)物件は、保証内容を謳っていても売主である事業者が倒産してしまうと訴求できなくなる恐れがある物件であることを認識して、改めて購入するかどうかを判断する必要があります。
既存住宅売買瑕疵保険に加入した物件の場合は、万が一売主である事業者が倒産しても、購入者が直接保険会社に請求できるので安心です。

■戸建てリノベ物件で瑕疵保険が必要な理由

瑕疵保険の範囲は構造躯体と雨水の浸入です。
瑕疵保険に加入するためには、瑕疵保険法人による検査に合格する必要があります。
従って、瑕疵保険に加入してもらえない(できない)物件は、瑕疵保険の基準に抵触する何かしらの不具合がある可能性があります。
ここで言う瑕疵保険の基準とは、主に建物の劣化に関する検査基準なので、その検査に合格できない物件だった場合は、例え内装が綺麗だったとしても購入するべきではないと言えます。
戸建て住宅は今後のメンテナンスも考慮して検討する必要があるため、最低限の基準すらクリアできない物件では困るのです。
また、こういったことを言うと事業者からは、社内検査ではクリアしています、というようなことを言うかもしれませんが、検査と言うのは第3者の存在があって成り立つものなので、信用してはいけません。
売主が宅建業者の場合は、その事業者が信用できるかどうかを見定める重要な判断基準として活用できるので、気になる物件が見つかったら、忘れずに「既存住宅売買瑕疵保険に加入してもらえるか」を確認しましょう。

厄介なのが売主が個人の場合です。
まず売主が既存住宅売買瑕疵保険に加入していることはほぼないので、売主が個人の場合は、買主である皆さんが瑕疵保険の手続きを行うこととなります。
宅建業者の場合と同じく、これからのメンテナンスを考えると、瑕疵保険の基準くらいはクリアしておきたいので、戸建ての取引の場合は瑕疵保険の利用を強くお勧めします。
何が厄介かと言うと検査の実施時期です。
買主の立場としては、売買契約を締結する前に検査を実施して、建物の状態を確認しておきたいところです。
しかし、余程売れ残って困っているような物件でない限り、基本的に売買契約を締結しないと検査などの手続きを実施させてもらえないことが多いです。
これからリフォームを実施する場合は、不具合箇所も含めて直せば良いだけなのですが、今回のテーマはリノベ済み物件なので、リノベ物件で万が一にも瑕疵保険に加入できない不具合が見つかったら話がかなりややこしくなります。
この辺りは消費者の立場ではなかなか交渉も難しいので、売主が個人でリノベ済みの物件の場合は、不動産仲介会社に頑張って調べてもらうしかありません。

また、リフォーム済み部分も注意が必要です。
実施されたリフォームの発注者は売主です。
あまりないとは思いますが、所有権が移転してしまうと、リフォームの保証が引き継げないということも考えられるので、保証の範囲についてもしっかり調べてもらうように依頼してください。

関連記事一覧